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結婚式のカメラマン下平豊のオシャレな結婚式のアルバム
愛知・岐阜・三重どこでも出張撮影致します。

ウェディングフォトグラファー 下平 豊のお話。

「絵を書くことが好きだった、ひどく人見知りで友達のいない少年」

 僕は小さい頃から絵を書くことが好きでした。
どれぐらい好きかというと、小学生の頃、放課中に外に皆で遊びに行かず、
教室の中でマンガやイラストをずっと書いているぐらい好きでした。
友達も当然いなかったです。
 ある日とある子が、僕のそばに寄ってきて、絵を見せろと言うのです。
嫌々僕が絵を見せると驚くことに
「なにそれ!なんか上手いじゃん!!」と言ってくれたのです。
 少しうれしくなって調子に乗って「こんなのもあるよ!」と
担任の先生の似顔絵を見せると
「うぁ!これめっちゃ似てる!!こんな才能あったんか!!」
と言って、ゲラゲラ笑ってくれました。
 その時気づきました。絵を書いてるだけでも楽しいは楽しいのだけど、
その絵を他人に見せて、その人が喜んでくれた時、
最高に幸せな気分になれる事を知りました。
絵が友達を作ってくれた。
絵が自分と友達を幸せにする道具や手段になる事を学びました。
ちなみにその子とは今でも親友です。
 
「絵が好きなだけでは、夢破れる」
 
 その後、ますます絵を書くことが好きになり、
漠然と絵やイラストを書く仕事に就きたいと思うようになり
19歳になった僕は、デザインの専門学校に入りました。
その頃になっても絵を書くことは好きでしたが、やはり専門学校ともなると、
僕より絵が上手な子はいくらでもいるわけです。
僕も下手だったわけではないのですが、誰も褒めてくれません。
専門学校なので、デッサンを先生に提出しても先生は簡単に褒めてくれるわけではありません。
 ここがダメだの、やり直しだの、当たり前ですが、厳しい言葉ばかりでした。
今ではわかるのですが、当時甘えてた僕は、それを乗り越える力がなかったのです。
「だって誰も褒めてくれないから・・・」
 卒業が近くなりみんなの就職が決まり始め、僕の焦りも半端なくなり、ついに僕は卒業したものの失意の中で就職もせずプラプラしていました。
 そんな頃、結婚式場でアルバイトをしていた姉が言うのです。
「カメラマンの、アルバイト募集してるから、あんたやってみたら?」
 写真かぁー。撮ったことないけど、絵と似てる所もありそうだなー。
 専門学校時代、僕は取らなかったけど、写真の授業もあったしなー。
 そもそもお金もないし、やる事もないから、やってみるかー。
 やってみる事だけは、すぐに決めました。希望が何だか湧いてきました。
正直他の大きな理由もありました。
 単純に"カメラマンってモテるかも!″
そんな浅はかな理由、むしろ事実は全く逆です。
人見知りで、引っ込み思案な僕は、カメコ(カメラ小僧)と思われるのが関の山です(涙)
 

「カメラマン初日の思い出は、ただ涙、涙。」

 僕の入ったカメラマン事務所は、某大手結婚式場に入っていました。
当時結婚式ブームで相当な数の式を撮影していました。初日は披露宴の見学です。
・・・新婦が最後に手紙を読むシーンで号泣してしまいました。
"おいおい!こんなの毎回見なきゃいけないの?こんなに涙が出るのに、僕ではシャッター切れないよ。無理だよ。やめようかな″
なんてヘタレなのでしょう。希望にあふれた今日、ここへ来たのにもう絶望。
しょぼくれたまま1日が終わると師匠が
「明日も朝9時に来てね。待ってるからね。」
「え!!」返事ができませんでした。
「そう言えば、今日シモちゃん(僕のこと)泣いてたよね。すごくいい事だよ。 今日のその気持ち忘れないでね。じゃあ明日。」
とりあえずいい事だと褒めてくれたから、もう1日だけ頑張ってみるか・・・。
そう思って翌日を迎えました。
 

「昨日とは、打って変わって、ただのスパルタ」


「シモちゃんおはよう!今日は早速写真撮るからね!」
「!!!」(僕が入った事務所は教育がかなり実践主義でした)
「大丈夫、大丈夫、カメラの設定はこのままでいいし、高砂の二人に声をかけてカメラ目線の二人を撮ってくるだけだからさ。」
(・・・だけって・・・。僕、相当人見知りで、引っ込み思案なんですけど・・・」とは言えず)
「・・・はい。」
「あとね。ストロボが光ったかどうかだけは、ちゃんと意識してね!!」
(この言葉が後々のしかかることになります。)
「ああ、それとね。披露宴で泣いちゃダメだからね。1日何十組も結婚式を撮らなきゃいけないから、泣いてたら仕事になんないよ!!」
(あれっ!!昨日はいい事って言ってなかったでしたっけ?もうわけがわからん。)

 そんなこんなで、とりあえず披露宴に入ってチャンスを伺っていた。
なるべく高砂のそばに、列席者が集まっていない時に行こう!勇気を振り絞って、とにかく気合いだ。
「おめでとうございます<おじぎ>二人の写真を撮らせて下さい!」
 新郎「あ、はい。お願いします。」(結構あっさりOK)

 そして二人は自然と顔と顔を寄せ合う。
僕はシャッターを押した。ちゃんとストロボも光った。
すると新婦さんが満面の笑みで言う「ありがとうございます。」
嬉しかった。ホントに嬉しかった。それに意外に簡単だったな。 
この一連の流れをその日6回やって実践修了。
「お疲れさん。じゃ、来週また来てね!!」
「はい!」元気よく返事をしていた。
帰りの電車の中で思い出していた。小学生の頃、僕が絵を見せてたら褒めてくれた日の事を。"写真頑張ってみよう!″
 

「ムンクの叫びは師匠の優しさ」

 それから一週間、意気揚々と仕事場へ向かう。
事務所の机の上にある4枚のプリントに目が行く。
〝あっ、僕が撮った写真だ、ちゃんと撮れてる・・・。″それを見ながらニヤニヤしてしまいました。
〝でも、もう少し撮った気がするけどな・・・″するとムンクの叫びにそっくりな絵の書いてある封筒がその隣に置いてあった。
中を開けてみると2枚の真っ黒な写真が。〝5組目と6組目の新郎新婦だ!!″(簡単だととか言いだして油断して
ストロボが光っているか確認してなかったんだ。
そして師匠からの便せんが1枚。
「あなたにとって何回目の結婚式でも二人にとっては、一度きりの結婚式なのです。」
 
 便せんいっぱいいっぱいに赤ペンで書いてあった。 泣きそうだった。
この言葉は、今でも忘れてないし、そしてこれからも一生忘れません。
 

「岐路に立つ。絵の世界に戻るか?写真を続けるか?」

  見習いの間は、僕の写真が、新郎新婦の手元に行くことはない。
一緒に現場に入っている先輩や師匠の写真が新郎新婦に納品される。
一人前になってデビューするまで、僕の写真は日の目を浴びない。
それが不満だったわけではないのです。少しづつではあるものの、写真も上手になっていたのは確かだし。
事実、写真を撮ってるだけで楽しかった。
  声をかけて写真を撮って、お二人がニコッとしてくれるだけでも十分嬉しかった。
 ただ、大好きだった絵の事が気になってきてしまっていたのです。
大げさな言い方ですが、自分の作品で人を喜ばせたい、その魅力を思い出した。
今ならもう一度、絵やイラストの世界に戻っても頑張れるかもしれない。
それに、写真をやめるのなら、今のうちだとも思った。デビューして責任のある立場になったらやめにくくなるし・・・。
途中で投げ出した絵のことが頭をもたげつつ、写真のアルバイトを続けていました。
 実際僕の写真の上達は遅かった。
技術的な面もそうだけど、度胸も足りなかった。
ここで絵の世界に戻っても、それはそれで写真を投げ出したことにならないか?
ここでやめたら、声をかけて写真を撮って、写ってもいないのに喜んでくれた新郎新婦への申し訳が立たない。
 ちょっと待てよ・・・。ここで写真をやめて絵の世界に戻っても、そこでまた下積みに戻るだけで、結局デビューは、さらに先になるし・・・なんでこんな簡単なことすらわからなかったんだろう。
デビューできない焦りで悶々としていた。専門学校時代の周りが就職先がどんどん決まっていて焦っていたのを思い出した。
今となっては、なんでデビューさせてくれないんだ・・・というただの自惚れでしかなかったのが正直な所です。
自分を買いかぶっていただけでした。
 


「絵と写真は同じもの」

 僕にとって絵と写真は同じだ・・・これには気づいていました。
描くのはカメラだけど、一瞬で描けて、何枚もすぐに描けるのが写真のいい所。
そこが気に入っていた。

 絵の方が好きだとか、写真の方が好きだとか、どっちが得意だとか、どっちの方が向いているとか、そういうことじゃない気がする。

 そしてある時、ふと気づいたのです。
自分に欠けていたもの。それは真剣にやるという「覚悟」絶対投げ出さないという「覚悟」でした。
 専門学校時代の僕も見習いではあるが仕事にしている今も同じ事なんだ。
覚悟があれば、解決する話なのだ。
写真も絵と同じぐらい好きだ。
 この仕事を続ける、この仕事を選ぶと覚悟した日が僕のはじまりです。
不思議な事に僕がそんな覚悟をしたら、その後すぐデビューする事になりました。神様は見てるって事ですよね。
それにしても一人だけで撮影して自分の写真だけで納品するという、その最初は心臓が破裂しそうなくらい緊張した。
全然覚悟が足りないな(笑) それもいい思い出です。
 

「カメラマンを続けてきて最近思うこと」

 早いものでカメラマンになって20年がたちます。
まだまだ勉強することだらけですが、人見知りや、引っ込み思案はだいぶ直ったと思います。
 でも元々そんな人間なので、気さくな新郎新婦さんだと今でも助かります。
もっと言うと、僕をからかったり、いじったりしてくれるぐらいの新郎新婦さんだと、もっと助かります。
 大人になったのかどうかはわかりませんが、作品じゃなくても
僕そのもで喜んでくれれば、僕はそれでも十分嬉しいです。
(写真そのものでも、勿論喜んでくれるよう精一杯やりますよ・・・汗)
最近は、年下の新郎新婦さんが増えていますが、年下のお二人でも
気軽にシモさん!シモちゃん!と呼んでくれれば、やる気は倍増します。
「新郎新婦と仲良くなりたいし、仲良くなれる!」
シンプルですがこの心構えでいつもやってますし、単純で申し訳ないのですが、
これだけは自信があります。 

「さいごに・・・」

 最近は、アルバムに自分が書いた絵やイラストを、
1か所入れさせてもらってます。
こんなの要らないよと思われた事も、きっとない事はないんでしょうけど、
それなりに喜んではもらえてるような気がします。
もっとわがままを言わせてもらえるなら、アルバムの中に複数か所入れれたり、
大きく1ページ、イラスト、似顔絵みたいなのを入れさせてもらえたらハッピーです。
 自分の都合ばかりでごめんなさい。
そして、今の僕では、まだまだ無理なんだけど、専門学校に行っている若い人達に写真を教えてあげられたらなと思います。
カメラマンになれとか、そういう意味じゃなくて
「写真もデザインもイラストもデッサンも手段は違っても目的は同じ事かも知れないよ。」
と伝えられるような人間になりたいと思っています。

小さな勇気と継続が覚悟を育む

                                                   下平 豊
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ウェディングフォトグラファー
下平 豊
 
好きな食べ物:たこ焼き
趣味   :ガンプラ作り